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ファア・サァモア

2006.06.11 (Sun)
私が今いる集落は、
湾から一気に駆け上がるような山に囲まれているので、
平坦な土地はほとんどない。

それでも、近所のサモアンファミリーは
つま先上がりの斜面を開墾して、タロイモ畑の世話をしている。

なにしろ周りがジャングルなので……
こまめに雑草をとり、雨で土壌が流れないようヤシの葉で芋の周りを覆い、
地中にて8か月、やがて丸々太ったタロ芋が食卓にのぼるまで
全て手作業での世話に休みはない。

収穫の時期が来ると、芋を静かに掘り起こし
丸々太った芋だけよりわけ、残りはまた、畑に埋めなおす。

タロイモの世話は、木の枝を使うのだそうだ。
鉄のシャベルを使うと芋がザックリと傷ついてしまうので「申し訳ない」と彼らは言う。
全ておいしく戴くことが大切なのだから、と。

この枝はよく使い込まれていて滑らかではあるが、とても重い。
父親は上手にその重みを利用して穴を掘る。
少年は父の黙々と穴を掘る姿を見て、見よう見まねで真似をする。
それを見守る母親の、満ち足りたようなまなざし。

湾を渡って来た風が、芋の葉を揺らして通っていく。
朝露が芋の葉の上をコロリと一周、地面に戻る。
やわらかな水彩画のような風景である。

これだけ世話のかかる芋、市場では高値で売られている。
しかし、この家族は収穫物はみんなのもの……といって、
全て近所に配ってしまう。

作物の恵みを配れることが、喜びであるのだそうだ。
それが、ファア・サモア(サモアのしきたり)であると。

この島は米領ゆえか、すっかり貨幣社会が浸透しており
特に港周りはいろいろと騒がしく
彼らのような人は珍しいのだ(道を歩いていると、現金をせびられることもある)。

サモアの言葉で、
「私の」という単語に、ラウ(Lau)という単語がある。
この単語、「私の」と同時に「あなたの」という意味も持つ。

私のものは、あなたのもの。
あなたの喜びは、私の喜び…。
この家族といると、いつも心が洗われる。

幸せの形は人それぞれ。
でも、根底に流れる心の向きは、きっと同じなんだな…と、フと思う。

いつもとても良くしてくださる私のサモアンファミリー、タロイモの収穫途中です。
人物はめったに撮らないのですが……
あんまりにも幸せな気持ちになる笑顔なので、日本の皆さんにもご紹介(本人たちも喜んでいます)。

右から、私のサモアンママ・リア母ちゃん、少年ユアサ、父・寡黙で優しいビッグユアサ。
IMG_0946.jpg
Misako (C) American Samoa
誰だって、ほんとうにいいことをしたら、いちばん幸せなんだねえ。宮沢賢治 銀河鉄道の夜

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