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イリイリの木のお話

2005.06.30 (Thu)
南太平洋の真ん中あたりにポツンと浮かぶ小さな島に、
一本の「イリイリの木」がありました。

イリイリの木が生きていたのは、島のはずれ。
山々に囲まれた珊瑚礁の湾のほとりでした。

みんなはイリイリの木が大好きでしたし、
イリイリの木も、何もかもが大好きでした。

サファイア色に輝く珊瑚の湾、
湾のむこうにそびえたつ、滴るような深緑の山々、
山の上にはどこまでも高く広がる青い空、
旅をしていく白い雲。

湾をぎっしりと銀色に染めるスコール、
雨上がりに空を結ぶ虹。

怒り狂ったような青暗い嵐だって、
イリイリの木にとっては宝物でした。

そして、伸びやかに広がる豊かな枝、
日に透けるエメラルド色の葉をたっぷり抱えて佇むイリイリの木は
湾に輝く宝石のように美しく、木陰の心地よさはまた、
島の人々にとっても格別のものでした。

お昼時には日焼けをした道路工事の作業員が集まってきて、
お弁当をひろげました。

彼らが仕事に戻るころ、
若いお母さんが赤ちゃんとお昼寝をしにやってきました。

学校や仕事が終わるころになると、木陰はさらに人気の場所でした。
おしゃべりをする人、湾を眺める人、大の字になって一寝入りする人。

時々、恋人が乗る船の帰りを待つ女性がやってきて、
幹に体を寄せて早朝の湾を見つめていました。
夕暮れの海へ船を見送った後には、こっそりイリイリの木に涙を託しました。

イリイリの木は、木陰で人々がくつろぐ姿を見るのが大好きでした。

イリイリの木は、さざめく波の音を聞くのが大好きでした。
遠くに砕ける外洋の荒波の音も好きでした。
雨や風が自分の葉を奏でていくのも大好きでした。
そして、
大海原を渡ってきた海鳥や、
海がめの話を聞くのも大好きでした。

イリイリの木は自分がイリイリの木であることを誇りに思っていました。

でも、自分で旅をすることはできませんでしたから、
みんなの話を聞き終わったときにはいつも、
「ああ、なんだか風になって旅をしたようで嬉しいよ、ありがとう」と、
つぶやきました。

イリイリの木はいつでも、どんなお話でも、
たいそう喜んで聞いてくれるので、
みんなも彼にお話をするのが大好きでした。


イリイリの木はみんなのことを大好きでしたし、
みんなもイリイリの木が大好きでした。

P9190142.jpg


ある夜明け、湾で育った若い海がめが
イリイリの木に挨拶をしにやってきました。

その若い海がめは、外洋に出て冒険をする年頃になったといいます。

海がめがたくさんのお土産話を持ち帰ることを約束すると、
イリイリの木は葉っぱを揺らして、旅の無事を祈りました。

外洋への出口にある岩を越える前に、
若い海がめはもう一度、ふるさとの湾を振り返りました。

それは美しい朝でした。
晴れ渡った朝の空はコバルト色に透き通り、
雲はまっさらな白でした。

その雲が越えていく対岸の山々はしたたるような深緑、
山すそが浸っている珊瑚の海はサファイアブルー。
白い砂浜から海面に突き出る火山岩は豊かな黒、

ほとりに佇むイリイリの木は、
いつものようにエメラルド色の葉を抱えていました。

そしてどの葉にも朝露がたくさん輝いていて、
湾を渡るそよ風までエメラルド色に染めていました。

海がめは意気揚々と大海原へと泳ぎだしました。
湾の出口にある岩を越えると、
生まれて始めて見る南太平洋の海の色は、真っ青でした。
まるで、空を丸ごと飲み込んだ青でした。

珊瑚礁の湾の中は、いろとりどりの砂糖菓子のような世界でしたが、
南太平洋はどこまでも深く、どこまで潜っても青でした。

豊かな、そしてさまざまな青でした。

太陽の光が筋になって差し込む水中は瑠璃色、
それからつゆくさ色へ、
深さを増して吸い込まれそうな海の底は藍の色。

ときどき大群の魚が銀色にきらめきながら、
回りの青をまぶしくしました。
大きな魚は、群青色の影になって通っていきました。
どの青もゆらめきながら、溶け合いながら、
さらにさまざまな青を作り出して見せてくれました。

若い海がめは自分の美しい冒険を、心から楽しんでいました。
時々、島で待っていてくれるイリイリの木のことを思い、
おみやげ話が増えていくことを嬉しく思いました。
そして、思う存分旅を楽しもう、
どこまででも行こうと思ったのでした。

若い海がめは潮流にのって、南太平洋を泳ぎ続けました。

一週間たったころ、大海原に漂う立派な流木を見つけました。
流木の周りではたくさんの海鳥や海がめたちが休憩をとって、
おしゃべりをしていました。

おいしかった海草の話、間一髪でサメから逃げた話、
月夜の不思議な海の色。

彼らの冒険話も、心躍るものばかりでした。
しばらく話を聞いていると、また海がめが一匹、
同じ潮流に乗ってやってきました。

そして、悲しいニュースを伝えてきました。
海辺のイリイリの木が切り倒された、というお知らせでした。

若い海がめは大慌てでその場を去りました。
木が、いつ、どんな風に切り倒されてしまったか…
話の続きを聞きたくはありませんでした。
そして、ふるさとの湾を目指して全速力で泳ぎました。

信じられない。
信じたくない。
何かの間違いに違いない。
イリイリの木に会いたい、早く、会いたい。
泳ぎすぎてヒレがちぎれても、
甲羅が破れてもかまわない、
とにかく海がめは泳いで、泳いで、泳ぎ続けました。


ようやく懐かしい島が見えてきました。
海がめは湾の入り口に突き出した岩と、
豪快に砕ける荒波を抜けて、
ふるさとの湾内に泳ぎ進んで行きました。


山も湾も、変わらぬ姿でそこにありました。
けれども
そしてそこでエメラルド色に輝いていたイリイリの木は、
もう、いませんでした。


湾のほとりは灰色のコンクリートで敷き詰められていました。

木陰を失った地面に真昼の太陽がギラギラと降り注ぎ、
空気は熱せられたまま漂って、しつこくまとわりつくようでした。

そして灼熱のコンクリートの上には、
若いお母さんも赤ちゃんも、
道路工事の若者も、家族連れも、
もう、誰もいませんでした。

珊瑚の海は、同じようにそこにありました。
そして湾の前には、山々が同じようにそびえていました。

けれど海がめには、全てが乾いたコンクリートの色に見えました。

全てが、元の色を失っていました。

海がめは、イリイリの木がいなくなってしまったことを実感しました。
海がめの帰りを待っていてくれたイリイリの木、
冒険話を聞くことを楽しみに思ってくれていたイリイリの木…。

風を、光を、風景を、そしてすべての生き物たちを、
なにもかもを愛して慈しんでいたイリイリの木。
みんなもイリイリの木が大好きでした。
イリイリの木は、そこにいてくれるだけで十分でした。

海がめは、大切な宝物を失ってしまったことを実感しました。
色を失った島の風景は、
涙のむこうににじみました。
そして一度泣き出してしまったら、
どんどん、どんどん、悲しくなりました。


海がめは灰色の風景から逃げるように
外洋に向かって泳ぎだしました。

止まれば悲しみに飲み込まれて、
暗い海の底に引きずりこまれそうで、
必死で泳ぎ続けました。

大波に投げ飛ばされて岩に叩きつけられても、
海がめはただひたすら泳いで、泳いで、泳ぎ続けました。

だけど海は、どこまで泳いでももぐっても、
乾いたセメント色でした。

やがて海がめはくたびれ果てて、
もう、ヒレを動かすことができなくなりました。

体の力を抜くと、海がめの体はぷかりと水面に浮かび上がりました。

おだやかな波がたゆとい、
浮かんできた海がめを優しく揺らしました。

どれほどそうしていたでしょう。
悲しみも怒りも、もう、なにも感じられませんでした。

とにかく、海がめはヘトヘトでした。
波に揺られながらぼんやりと遠くを見てみれば、
水平線のあたりでは海と空の境目も、
ぼんやりとにじんでいました。

海がめはようやく自分がひどく疲れていることに気がついて、
深く息をつきました。

血のにじむヒレ、ひび割れた甲羅。
海がめは、自分がずいぶん傷ついていたことにも、
ようやく気がつきました。

やがて水平線のむこうから、
小さな雲たちと小波がダイヤモンドのように輝きながら近寄ってきました。

雲を踊らせ水面をはじきながら
大海原を駆け渡ってきたのは、風でした。

そしてその風が通りすぎていくときに、海がめは、
頬を優しくなでられたように思いました。

そのとき、ふいに海がめは思い出しました。

イリイリの木が、みんなの冒険話を聞いた後に
よく言っていたあの言葉…

「ああ、なんだか風になって旅をしたようで嬉しいよ、ありがとう」

海がめには、イリイリの木の呟きが
もう一度聞こえたようにも思えました。

それから海がめは、イリイリの木が見送ってくれた
旅立ちの朝のことも思い出しました。

あれは、美しい朝でした。
晴れ渡った朝の空はコバルト色に透き通り、
雲はまっさらな白でした。

その雲が越えていく対岸の山々は濡れたような緑色、
山すそが浸る珊瑚の海はサファイア色で、
白い珊瑚の浜から海面に突き出る火山岩は、豊かな黒。

ほとりに佇むイリイリの木は、
エメラルド色の葉を抱えていました。

そしてどの葉にも朝露がたくさん輝いていて、
湾を渡るそよ風までがエメラルド色に染まっていました。

海がめは、今、大海原を駆けていく風も、
あの朝のそよ風と同じようなエメラルド色をしているように思いました。

イリイリの木は、風になったのかしら。
海がめはそう感じました。

…イリイリの木は、風になったのかしら。
P7160005.jpg


海がめは大海原を駆け抜けていく風の中で考えていました。

そしてずいぶん時間をかけてから、
海がめはそう信じることに決めました。

それから海がめは思いっきり伸びをして、風に微笑みました。
そして、深い深い海の中にもぐっていきました。

大海原を駆け渡るエメラルド色の風は、
もう一度だけ海がめのほほをなでました。

彼女が深い海に消えて行く、ほんの少し前に…。

空は青く、どこまでも高く透き通った青でした。
風とともに渡っていく波は銀色に輝き、
旅を続ける雲たちは、群青色の影を海に落としていきました。

そして海は、どこまでもどこまでも、豊かな青に輝きました。
空をまるごと飲み込んだ、青でした。

イリイリの木はみんなのことを大好きでしたし、みんなもイリイリの木が大好きでした。

P9190142.jpg
Misako (C) American Samoa
海がめの通り道である珊瑚の湾、レインメーカー山、黒いほど青い空、赤道の太陽に透き通るイリイリの葉

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アロハの解釈/このパターン

2005.06.22 (Wed)
アロハの語源には、いくつかの解釈がありますが
その中に、暖かくてステキなメッセージがあります。

旅の途中で、
こんにちは、などと訳されることの多いアロハの言葉の根幹は、「慈しみ」と教わりました。


・尊重と思いやり・おだやかさを忘れないように生きていこうね
・助け合うことによって生まれるハーモニーを楽しもうね
・明るい方向へ想いをチューニングしようね
・なにがあっても謙虚な気持ちは忘れないでね
・上の4つの教えを辛抱強く守れば充足の光に包まれる

ハワイ語でこの5つを書き出して、頭文字をあわせるとALOHA。
私はこのアロハが大好きなんです。

ハワイ語の勉強不足で、正しいスペルがわからなくてお恥ずかしい☆お許しくださいませ。

P7160005.jpg
Misako(C)2004 Hawaii
実にいろいろな表情を見せてくれる木々と空、そして宙にダイビングしていく青。

愛されることと愛すること

2005.06.14 (Tue)

感謝されることや許されること、
愛されることは、それは素敵なことだけど

感謝することや許すこと、
愛することを学んでいくことこそ、人生の宝物とフと思う。




夜明け前の凪が終わった。
海から風が渡って、朝が来る。
風のやんだ闇の中、
山あいにとまどっていた雲が風に運ばれて楽々山を越えていく。

皆様の一日が素敵な日々でありますように。
P6150075.jpg
Misako (C) Tutuila, American Samoa 2005

銀河が…

2005.06.09 (Thu)
山歩きの途中で、急に空気の様子が変わった。
なんだろう、なんだろう。なんだかどきどきする…

やがて、水音が聞こえてきた。
滝だった。

空が、雲が、滝の上をたっぷり流れていて、

銀河が
流れてくるようだった。

P7260039.jpg
Misako (C) 2004 Oahu, Hawaii

皆様の毎日が素敵な日々でありますように。

こもれびさんが、銀河側からの撮影をされていました。飛び込みたくなる嬉しい偶然。


命のまぶしさ

2005.06.05 (Sun)
火山の女神ペレが創り出した新しい大地の上に、
新しい命がやってきた。

生を拒むような灼熱地獄の溶岩の平原がどこまでも広がる。
それでも風に運ばれてくるパイオニアの植物たちと豊かな雨、
そして時の流れによって、
100年もすればここは生命力のぶつかりあうジャングルに変容していくという。

命というものは、どこまでもまぶしい。
P8070036.jpg
Misako (C) Hawaii 2004

今日も優しく日が暮れる

2005.06.03 (Fri)
去年の夏、オアフ島に滞在中のこと

私と相棒の、どこかの歯車が狂ってしまい
息苦しくなって、よく一人で散歩に出かけた。

楽しげなカップルや家族連れでにぎわうアラモアナパークを歩いていたら、
幼いころ、テレビ放送の天気予報に使われていた影絵を思い出す夕暮れに出会った。

世界はいつでも優しいものだ、
自分で固く心を閉じてさえしまわなければ。

P7250071.jpg
Misako (C) Oahu, Hawaii 2004
オアフ島のアラモアナパーク・ノスタルジックな夕暮れ時

今、とても欲しくなってしまった本
光と影の詩人―藤城清治の世界

一体感

2005.06.01 (Wed)
海を見下ろしたとき、海から空を見上げているのと
似たような感覚を味わって、どきっとした。

そうか…。
海の青は、空の青を飲み込んだ青だものね。

こういう一体感はそれがそのまま、幸福感。
P1020156.jpg
Misako (C) Hawaii 2002
ハワイ島からオアフ島へ戻る途中、風に乗って移動する雲たちと南太平洋の海。
…空みたい。


皆様の毎日が素敵な日々でありますように。
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